學志館

2022.11.14

『故郷』 魯迅 

教育
そろそろ試験のシーズンですね。
中3のこの時期は松尾芭蕉の『奥の細道』か、
魯迅の『故郷』でしょう。
満月の夜に銀の首輪をきらきら光らせ、
さすまたを手になんだかよく分からない動物、
「チャー」を狙うルントウの、すいか畑の光景は、
視覚的に印象が強い描写なので、
覚えている方も多いのではないでしょうか。
私も中学生の時に学習したものなので、
昔から教材として採用されていることになります。
発表されたのは1921年5月だそうです。
日本に紹介されたのは1927年。
ちょうど中華民国成立後で、中国がばらばらだった頃ですね。
魯迅の実体験に基づいて書かれているものなので、
故郷への思いと当時の中国の有り様が痛切に伝わってきます。
主人公の名前も「迅(シュン)ちゃん」です。
登場人物がそれぞれの身分制度や境遇を象徴していて、
過去の魯迅とルントウ⇔現在のホンルとシュイション
揚おばさんの過去から現在への変化も、
当時の中国の有り様を暗示しています。
纏足をするくらい裕福で美人だった人が、
何故「犬じらし」をつかんで逃げ去るまでに落ちぶれたのか。
『故郷』の読解で求められるのは、過去と現在の対比です。
ルントウがどれだけ私と違う憧れの存在できらきら輝いていたか、
そして現在どのくらい変わってしまったのか、
「私はかわっていない(つもり)」「ルントウはかわった(ようにみえる)」
意識のずれから起こる哀しみを理解することが必要です。
試験の出題でとにかく多いのは
最後の段落の比喩、「歩く人が多ければ、そこが道になるのだ」の意味を問うものです。
私の言う「希望」とは何か。ルントウの「偶像崇拝」と同じにしないためには?
また「…旦那様!」「でくのぼう」もキーワードとして頻出です。
ルントウの「くちびるが動いたが、声にはならなかった」言葉は何か、
というものもあります。
当時の中国の世相を知らなければ真には理解できないような気もしますから、
ほんとは社会科の歴史と時期を合わせてやってもらいたいなあ…と思う教材です。
日本の歴史においても辛亥革命辺りはとても重要ですから。
魯迅が日本に留学していて、その時代をモデルに太宰治の『惜別』が書かれたこととか、
興味深いエピソードも沢山ありますよ。
試験も頑張ってくださいね~。
国語担当平野でした。
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