『野菊の墓』という小説があります。
13歳の主人公と15歳の彼女、従姉弟同士の淡い恋が周りに引き裂かれ、
最後に主人公は彼女の墓に野菊を植えて去る、というお話です。
ドラマや映画で、山口百恵や松田聖子など時のスター(古い?)が
薄幸のヒロイン民子を演じ、当時話題となりました。
(『ロミオとジュリエット』も16歳と14歳の恋物語ですから、
純愛物語には若さも必要なのでしょう?)
で、主人公の政夫君が言うのが冒頭の台詞です。
「私なんでも野菊の生れ返りよ。
野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。
どうしてこんなかと、自分でも思う位」
「民さんはそんなに野菊が好き
……道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」
例の坂道にもやっと秋が本格的に来て、
白や黄色や紫の野菊が咲いていました。
野菊は華やかより可憐という言葉が似合います。
秋のあわれはやはり少し心切なくなる季節なのでしょうか。
作者は伊藤左千夫、正岡子規の弟子にあたり、
文学史では歌人として教えることの方が多いですね。
夏目漱石が激賞したという『野菊の墓』、
1906年(明治39年)の作品ですが、長くはないので、
もし良かったら読んでみてください。
たまにはSentimentalもよし。
国語担当平野でした。