學志館

2023.06.12

「教育力」の復活

教育

2012年の講師研修会において、発表した 「教育力」の復活 を掲載します。コロナ禍により私たちは大きな影響を受けました。特に子どもの教育に関わる者として、もう一度原点に立ち戻り、元々の自分の志を確認するためにも再掲載します。學志館のHPからも、資料ダウンロードという形で全文を閲覧できます。

 

「教育力」の復活

内容アウトライン

   ⑴教育力とは?

   ⑵教務力について

   2−1英語教科指導について

   2−2国語教科指導について

   2−3数学教科指導について

  ⑶教育力(狭義)とは?

  ⑷教育力(広義)について

 

 

⑴教育力とは?

 教育力(広義)は、教務力と教育力(狭義)から成り立ちます。

⑵教務力について

 教務力は、教科を教える力。学校の内容に沿って定期試験で良い点数を取るためには、教科の基礎力を育てることが不可欠です。その基礎力の内容は、基本レベルで易しいことではなく、その基礎力が身につけば応用問題も楽々解ける基礎力のことです。

 次に各教科の教務力を私たちはどのように捉えているかを見ていきます。

  2-1〜2-3までの⑵教務力 各項目については HPに掲載している学習内容各教科 をご覧ください。

2-1英語教科指導における教務力

  中学校の英語

  塾の英語

  小学校の英語

2-2国語教科指導における教務力    

  国語は語彙力と読解力 

2-3算数・数学教科指導における教務力 

  解き方を考える力

  自分でミスを無くせる力

  発言をする力

⑶教育力(狭義)について

 生徒に勉強する姿勢を身に付けてもらう。2点あります。ルーティンワークのように日常的に繰り返し行う事に対し、自然に取り組める姿勢と学ぶことに興味関心を持ち、学習することで自分の世界が広がる、人間として成長できる事に結びつく学習姿勢

 前者の姿勢は、毎朝起きたら顔を洗う、歯を磨く、トイレを使ったら手を洗うという日常的な繰り返しの行為のように、すること自体を意識せずにできることが理想です。明日は国語の授業があるから漢字テストの準備をする、宿題をする。毎回の授業で宿題・小テストを必ず出すことは生徒の学習姿勢を構築する上で欠かせない働きかけになります。更に宿題を出すだけではなく、出したからにはそれへの取り組み姿勢を確認しなければなりません。そのなかには、宿題忘れのペナルティーとして居残り学習や小テストの再テスト(来週までの宿題を半分してから帰宅、小テストは9割以上で合格。それ以下は居残り再テスト。できるまで帰れない。生徒・クラス状況に応じて居残り学習の内容は変えることが必要。ただし『漢字学習マニュアル』中の「実際の対応」には十分留意)を生徒に義務として課さなければなりません。

 また、『学習ノート』*への毎授業後の取り組みも、姿勢を構築するためのキーポイントになります。『学習ノート』に自ら取り組める生徒は宿題・小テストの準備を忘れてくることはなく、学習姿勢の半分は出来上っていることになります。逆に取り組めない生徒は最後まで、この学習姿勢が習慣化して身についていないため、宿題を忘れたり小テストの準備をしてこないで再テストを受けることが、生徒の学習レベルの高低にかかわらず繰り返します。『学習ノート』の理想型は授業終了時に生徒自らそのノートを出して、「先生、宿題は?テストは?」と聞いてくることです。更には「今日の授業ポイントは〜で良いですか?」まで行けばパーフェクトです。授業は安定し、生徒との信頼関係も良くできている状態です。以上の状況を作り出せる力は教師の教育力です。すぐにはこのクラスはそうはならないが、半年〜1年後には必ずそういう状態に持っていきたいと想い、生徒に向い合ってもらいたいと思います。

『学習ノート』文系用・理系用の2種があり創立以来改良を重ね現在の形になる。その日の学習ポイント、宿題等を記入する。A5サイズのバインダーを使用。

 もう一つの生徒の中に育むべき学習姿勢はこれまで述べてきた学習に関わることの最終目標になります。最も重視したいことですが、これまでの教務的努力や教育力が前提になります。

 学習への取り組みが、テスト・試験・入試のためという狭い範囲の動機づけに縛られていない学習姿勢です。それらを動機に学習への取り組みを発動させると、目先の目標がなくなれば学習する動機は失われます。新たな、目標を見つけなければなりません。その動機づけの欠点は目標到達後消失する事だけではなく、更に大きな問題として、そういう動機に基づいて学習する期間が長ければ長いほど、目先の目標のために学習する習慣が身についてしまう。すると学習・勉強に興味関心を求めることができなくなり、効率的な目先の目標設定ばかりで、本人にとって本当の新たな目標を見つけることがますます難しくなる。その結果、ニートの様な若者が増えているというのは推測ですが、無関係ではないと思われます。そういう意味で、今、先生の眼前にいる生徒は単に勉強をしているだけではなく、学習姿勢も日々構築しつつあり、それがその生徒の今後の生きる姿勢までに影響を与えているかも知れないとどこまで思うことができるか。それを気遣い、予想して生徒に向い合えるかが教師の教育力になります。

 教師の教育力の視点として、教師の「指導力」よりも「内的深化」が鍵になり、知識の切売りする教師よりも、「ものの見方・考え方」の深化を促すこと、外から詰込むよりも、内から引き出すこと、How(方法・手段)の重視から、What, Why(目的・動機)重視の教育を大切にしたいと思います。

 そのためには教師自身の「指導力」重視の視点から「内的深化」の視点に移る必要があります。ぐいぐいと生徒をひっぱって勉強させることよりも、生徒自らが勉強に取り組む大切さに気づかせる。

現状は「指導力」重視であり、知識の切売り、外から詰込む、How(方法・手段)の重視ですが、それを「内的深化」「ものの見方・考え方」の深化、内から引き出す、What, Why(目的・動機)重視の教育にどのように転換していくか。そこに教育の質的な進化発展があると考えています。

 學志館は、現状のニーズに基づいた教育の限界を認識しつつ、教育の質的な転換を求め歩んでいきたいと思います。

⑷教育力(広義)について

最後に、

 広義の教育力とは上記に述べてきた教務力と教育力(狭義)が共に育まれた段階で実現されるものです。

 教務力は各教科の専門性を生かし、生徒に学科を学ぶことは単にテストのためではなく自ら知り探求する喜びをその中に見いだすことができる営みであり、生徒の人間としての生き方のよりよき将来のための鋳型を作ることにも影響を与えます。

 教育力(狭義)は単なる精神論ではなく、学習する機会を通して生徒の内側に人間としての成長も大切に育むべきであり、そこから本当のエネルギーが出てくるという視点を持っています。

 勉強だけすればいい、合格できればなんでもいいという成果重視の教育から学習主体である生徒の内側には、勉強する、できる力が潜在していると同時に人間として成長する存在であるという視点をもっと重視していきたいと思っています。その実現のためには、最近では忘れられてしまっている“教育力”を復活させる教育を実践して生きたいと願っています。“教育力の復活”は學志館のテーマとして掲げていきます。

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